Aiy-yue-kwee’ Nee-kee-chue!
皆さんこんにちは、
亜希ダウニング(aki_downing)です!
カリフォルニア州のネイティブアメリカン”ユロック族”に嫁ぎ
先住民の土地でのびのび楽しく暮らしています!
11月は「ネイティブアメリカン文化遺産月間」です。
この月は、アメリカ先住民の歴史や文化について理解を深め、彼らが現代社会においてどのような役割を果たしているかを学ぶ大切な機会です。
アメリカ先住民は何千年も前からこの地に住み、多くの部族がそれぞれの言葉や伝統、信仰を守り続けてきました。長い歴史の中で多くの困難に直面しながらも、その豊かな文化は今も大切に受け継がれています。
この機会に、家族で一緒に彼らの文化に触れ、共に学んでみてはいかがでしょうか。
- 在米セキュリティカウンセラー
- オンラインコミュニティ『LinkUp』代表
- 岩手県陸前高田市国際姉妹都市サポーター
- 翻訳者・逐次通訳者
- Webライター・Webデザイナー
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- オンラインコミュニティ『LinkUp』代表
- 岩手県陸前高田市
国際姉妹都市サポーター - 翻訳者・逐次通訳者
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ネイティブアメリカン文化遺産月間
ネイティブアメリカン文化遺産月間(Native American Heritage Month)は、毎年11月にアメリカ合衆国で実施される、先住民族の歴史、文化、伝統を称える期間です。ネイティブアメリカンの多様な文化的遺産を理解し、彼らがアメリカ社会に果たしてきた重要な役割や貢献を再認識する機会となっています。
起源
ネイティブアメリカン文化遺産月間(Native American Heritage Month)の始まりは、20世紀初頭にまで遡ります。その当時、アメリカ先住民族の文化や歴史をより深く学び、彼らの貢献を称えようという活動が、アメリカ国内で少しずつ始まっていました。
1915年には、セネカ族のアーサー・C・パーカー博士が、ボーイスカウトアメリカ連盟(英語: Boy Scouts of America, 略称BSA) に「”First Americans’ Day”を設けないか」と提案します。この提案がきっかけで、翌年の1916年、ニューヨーク州が”American Indian Day”を公式に宣言しました。これは、先住民族の文化や歴史を尊重し、それを地域社会全体で広める初めての試みでした。
その後、他の州も続々と同じような記念日や週間を設け、アメリカ全土で先住民族の歴史や文化への関心が徐々に高まっていきました。
正式な制定
1976年、アメリカ建国200周年を迎えた際に、連邦政府は「アメリカインディアン意識週間 ”American Indian Awareness Week”」を制定しました。これが先住民族に対する全国的な認知の第一歩となり、先住民族の文化や歴史に対する理解をさらに深めるための契機となりました。
その後、1986年にはロナルド・レーガン大統領が11月23日から30日を「アメリカインディアン週間 “American Indian Week”」として宣言し、先住民族の豊かな文化と遺産を称えるためのイベントが各地で開催されるようになりました。
そして、1990年8月3日、ジョージ・H・W・ブッシュ大統領は正式に11月を「全米アメリカインディアン文化遺産月間 ”National American Indian Heritage Month”」と宣言しました。先住民族の文化、伝統、音楽、工芸品、ダンスなどを広く共有し、アメリカ全土の人々に理解を深めてもらうための大きな一歩でした。
意義『再認識』
この月間は、ネイティブアメリカンの多様な文化的遺産について理解し、彼らがアメリカ社会に果たしてきた重要な役割や貢献を再認識する機会です。ネイティブアメリカンは、アメリカの発展において農業、医療、政治、環境保護、軍事などさまざまな分野で重要な役割を果たしてきました。
農業の分野
彼らが育てていたトウモロコシ、ジャガイモ、トマト、カボチャなどは、アメリカの食文化に大きな影響を与えました。彼らが編み出した持続可能な農業方法はアメリカの農業に取り入れられ、現在も私たちの食生活に貢献しています。
医療の分野
彼らは天然植物を用いた薬草療法の知識を持っており、アスピリンの成分とされる柳の樹皮を用いた治療法などが現代医学にも影響を与えました。
政治の分野
イロコイ連邦”Iroquois Confederacy”が発展させた合議制のシステムが、アメリカの憲法や議会制度に影響を与えたとされています。この合議制は、彼らが地域社会の意思決定において民主的な方法を尊重していたことを示しており、合衆国建国の理念にも取り入れられました。
環境保護の分野
彼らは自然との共生を大切にし、土地や水を守るための持続可能な資源利用の考え方を持っていました。彼らの自然保護の精神は環境保護運動にも反映され、現在アメリカ全土で見直され始めています。
軍事の分野
第二次世界大戦中にナバホ族などの”コードトーカー”が暗号通信士として活躍し、アメリカ軍に大きく貢献しました。彼らの暗号は敵に解読されなかったため、勝利に大きく寄与したとされています。
このように、ネイティブアメリカンはアメリカ社会のあらゆる側面で貢献し続けており、その役割は現代に至るまで受け継がれています。
先住民への誤解や偏見
この月間は、過去の誤解や偏見を解消し、彼らのアイデンティティを取り戻すための取り組みも含まれています。ネイティブアメリカンについてはいまだに多くの偏見や誤解が存在し、それが現代社会を生きるネイティブアメリカンに深い傷を残しているのです。
現在、全米には574の連邦政府公認の部族と324のネイティブアメリカンの保護地区があり、それぞれが独自の文化、伝統、言語を持っています。個々の部族の多様性と豊かさを再評価し、尊重し、彼らの文化が守られることを目的としています。
アメリカ先住民に対する偏見には、歴史的背景や文化的な誤解に基づくさまざまなステレオタイプが含まれます。以下は代表的な偏見の例です。
先住民は野蛮、暴力的
ネイティブアメリカンは、アメリカの歴史において『野蛮 “Savage”』『未開 “Primitive”』『好戦的で暴力的な部族 “aggressive and violent tribe”』として描かれることが多く、彼らの文化や生活は偏見と誤解に包まれてきました。
これは西部開拓時代や植民地時代に入植者が先住民族を敵対的な存在と見なし、彼らの文化を理解することなく『野蛮』として扱ったことから来ています。しかし実際の先住民族は、多くの部族間で独自の社会制度や外交を持ち、入植者との関係を模索していたのです。
映画『ある日どこかで』や『風と共に去りぬ』などの歴史映画では、アメリカの西部開拓時代の中で描かれる先住民族の厳しい状況や彼らに対する偏見の様子が伺えます。ディズニー映画『ピーター・パン』や『ポカホンタス』は、先住民に対する偏見やステレオタイプの描写があります。先住民の文化や価値観を反映したものではなく、誇張された描写や固定観念に基づいて描かれているため、当時から批判の対象となってきました。
全ての先住民族が同じ文化を持つ
『ネイティブアメリカン』という単一のアイデンティティとして先住民族を捉えるアメリカ人も少なくありません。
実際には数多くの言語、文化、伝統がありますが、一括りで見られることが多いです。こうした見方は、各部族が持つ独自の文化や価値観を軽視するものであり、先住民族の多様性を無視しているとして現在でもたびたび問題になります。
上記の画像はカリフォルニアの地図とカリフォルニアの先住民について表しています。
カリフォルニアは、全米で2番目にネイティブアメリカンの人口が多い州です。連邦政府に認定された部族が110、連邦認定を求めている部族が81あります。ちなみにカリフォルニアで最大の部族は、私が嫁いだ”ユロック族”です(現在約6,100人のTribal memberがいます)。
このすべてが、別の文化を持ち、別の言語を話し、別のアイデンティティがあるのです。
私も普段SNSで発信をしていると「○○族について知りたいです」「東海岸の部族の○○は、、」など質問やご意見を頂くことがありますが、私が嫁いだのはユロックなので、他の部族については皆さんと同じように資料を見たり文献を読んだりして学んでいます。
日本人と結婚したアメリカ人に「シンガポールって○○なんでしょ?」「ベトナムの歴史を教えて」と聞いているのと同じです。アジア人と結婚したからといってアジア全ての文化や歴史を学んでいる訳ではないのです。
これからも”ユロックに嫁いだ日本人”の視点でお伝えできたらと思っています。
先住民は神秘的な存在
先住民族は”自然と一体となった神秘的な存在”としてイメージされることがありますが、これは誤解を招く偏見の一つです。映画や文学では、彼らが”自然と共に生きる純粋な人々”として描かれることが多いですが、実際は彼らも複雑な社会や現代の課題を、他の人種と同じように抱えています。
ここで、日本人に分かりやすいよう例を2つ挙げます。
日本のアーティストEXILEは、音楽やパフォーマンスの中で、”自然”や”スピリチュアル”といったテーマを度々取り入れており、ネイティブアメリカンや他の先住民のイメージを神秘的な存在として扱う傾向があります。EXILEが発表した楽曲やMV、ライブパフォーマンスでの衣装や演出に、特定の先住民が使用するような羽飾りや民族調の衣装が登場することがあります。
こうした演出はEXILEだけでなく日本のエンターテインメント業界ではよく見られるものですが、ネイティブアメリカンの文化は、地域や部族ごとに異なり、非常に複雑で多様です。パフォーマンスの中で先住民のイメージがシンボルとして使われると、”神秘的で特別な存在”というステレオタイプが助長されるリスクがあるので注意が必要です。
原宿にある『ゴローズ(goro’s)』は、ネイティブアメリカン”ラコタ族”の文化にインスパイアされたジュエリーを扱うお店で、フェザーやシルバーを使ったアクセサリーが販売されています。
しかし、彼らの文化をインスピレーションにした商品が販売される際、偏見や誤解が生まれることがあります。例えば、”フェザー=ネイティブアメリカンの神秘的なシンボル”というステレオタイプをより一層強くするリスク。実際のフェザーの装飾は、特定の部族の文化や儀式に深く結びついた神聖なものです。それが単に「おしゃれ」や「スピリチュアルなアイテム」として使われると、彼らの伝統や宗教的な価値が無視されることがあるのです。
もちろん上記で述べた2つの例が、無断でやっているものでなくきちんと正式に許可を得ている可能性もあります。しかし「許可を得ているから」といってステレオタイプを助長することはいいことなのでしょうか。
ネイティブアメリカンコミュニティ内では「goro’sは外国人がお店に入れず、日本人もしくは誰もが知る有名人でなくてはならない。ラコタ族の人も入れず困惑した。」「ラコタから許可を得たとあるが他の部族の羽根やモチーフを使っているがその部族の許可を得たのか」という意見もありました。
※これらについて画像等で具体的な例を挙げようと思いましたが、著作権やらなんやらで訴えられたらイヤなので自粛。
先住民族の装飾や舞踊のパフォーマンス化
ネイティブアメリカンの伝統的な装飾や踊りが『コスチューム』や『パフォーマンス』として扱われることがあります。
- ハロウィンの仮装
ハロウィンの時期になると”インディアンの酋長”や”ネイティブアメリカンの戦士”といった衣装が仮装として販売されることがあります。伝統的な装飾品や服装を模倣したもので、羽根飾りやビーズを多用しています。しかし実際の羽根飾り(ヘッドドレス)は、特定の儀式や称号をもつ人々にのみ与えられる神聖なシンボルであり、『ユニークな仮装』として扱われるべきではありません。(※売ってても買ってはダメ) - スポーツイベントのマスコットや応援
いくつかのスポーツチームは、ネイティブアメリカンの名前やシンボルをマスコットとして使用してきました。代表的なのは、ワシントン・レッドスキンズ(現:ワシントン・コマンダーズ)やクリーブランド・インディアンス(現:クリーブランド・ガーディアンズ)があります。これらのチーム名やロゴ、または観客が応援の際に行うフェイスペイントや「ウォーチャント“War Chant”」(戦いの歌の模倣)などは、先住民族のアイデンティティを軽んじる行為として批判されてきました。
応援で使用される「トマホーク・チョップTtomahawk Chop”」というジェスチャーは、先住民の戦士のイメージを模倣していますが、これは歴史的にも文化的にも誤った描写です。こうした応援行動は、彼らの伝統や価値観に対するリスペクトを欠いているとされています。 - イベント等での羽根飾りの乱用
音楽フェスティバル(例:コーチェラ・フェスティバルなど)で、羽根飾りを身につけた観客が見られることもあります。フェスのファッションアイテムとして羽根飾りが選ばれ”自由””自然との一体感”といったテーマで身に付けられますが、先住民の文化に対する敬意を欠く行為とされ毎年物議を醸しています。
このような行為は、彼らの神聖な文化的アイテムやシンボルを軽視し、ステレオタイプを強化する一因ともなります。
先住民は依存症。貧困。
先住民コミュニティは、長い歴史の中でアメリカ政府から土地の奪取や強制移住といった厳しい政策を受けてきました。こうした過酷な経験が、現在も先住民の貧困やアルコール依存の問題に影響を及ぼしています。
その結果、「先住民はアルコール依存になりやすい」「貧しい生活をしている」という偏見が広まっています。しかし、これは彼らの性格や文化のせいではなく、歴史的な差別や搾取が原因です。このため、貧困やアルコール依存といった問題が社会的な課題として今も続いているのです。
また、一部の人々は「先住民は政府の補助金に頼っている」と誤解しています。確かに、先住民の一部には過去の被害に対する補償として政府から支援が行われていますが、これは強制移住や土地剥奪などの被害に対するもので、彼らの経済的な自立を妨げるためではありません。
実際私たち家族や親戚も政府から様々な支援を受けて生活していますが、そこには複雑な問題がありすべてを一言で説明するのはとても難しいです。今でも日本にいる知人やSNSなどで事情を知らない人からは「子どもたち(アルコール依存症にならないように)気を付けないとね」「カジノで資産増やしてるんでしょ?」などと言われることがあり、説明に苦労しています。
もしアメリカ人から「日本人なの?今も広島の被爆の影響あるの?」なんて言われたらどう思うでしょうか。ネイティブアメリカだけ、なぜかずーーっと過去のステレオタイプを押し付けられているのです。
イベントや教育活動
Native American Heritage Monthでは、ネイティブアメリカンの文化・歴史・伝統を称え、理解を深めるためにさまざまなイベントや教育活動が行われています。以下はその一例です。
- 文化イベントとパフォーマンス
ダンスや音楽、工芸などの伝統文化を紹介するイベントが全米各地で開催されます。パウワウと呼ばれるダンスの祭典や、伝統的な音楽のパフォーマンス、アート展覧会が行われ、ネイティブアメリカンの多様な文化が披露されます。 - 映画上映や講演会
ネイティブアメリカンの視点で作られた映画の上映会や、先住民族の歴史や現代の課題をテーマにした講演会も多く行われます。先住民族のリーダーや活動家がスピーカーとして招かれ、彼らが直面している課題や誇りについて知る機会になります。 - 教育プログラムとワークショップ
学校や図書館、博物館では、ネイティブアメリカンの歴史や伝統を学ぶためのプログラムが実施されます。例えば、アメリカの歴史における彼らの役割や、部族ごとの言語や文化を紹介するワークショップが開かれ、特に子供たちにとって貴重な学びの機会となっています。 - 博物館や美術館の特別展示
スミソニアン博物館など、多くの美術館や博物館が特別展示を行い、ネイティブアメリカンの歴史的な品やアート作品を紹介しています。一般の人々がネイティブアメリカンの文化や伝統に触れ、理解を深める機会を提供しています。
こうした取り組みを通じて、ネイティブアメリカンの多様な文化や歴史を広め、彼らのアメリカへの貢献を認識するきっかけが生まれています。また、彼らの権利やアイデンティティを尊重し、過去の歴史的な差別への理解を深める機会にもなっているので、アメリカ在住の日本人の方はぜひこの機会にこうしたイベントやワークショップに参加してみてください。
最後に
The University’s Native American Student Organization (ネイティブアメリカン学生組織)は、このような声明を出しています。
“Every month is “Native American Heritage Month”. Indigenous people are proud to be Indigenous every day, and we recognize our ancestors and histories every day. Being Indigenous is a constant act … It does not matter if it’s Indigenous Peoples Day or Native American Heritage Month, we honor and recognize our ancestors, communities, and histories every day.
You are always on the land of Tribal Nations … Accurate history of Indigenous peoples needs to be taught from a young age to help combat the harmful misinformation and stereotypes about Indigenous peoples—Indigenous erasure is a major issue and it needs to be addressed proactively.”
『私たちにとっては毎月”ネイティブアメリカン文化遺産月間”です。ネイティブアメリカンは、毎日欠かさず自分たちが先住民族であることを誇りに思っており、祖先や歴史に敬意を表しています。先住民であることは変わることのない事実です。それが先住民の日であろうと、ネイティブアメリカン文化遺産月間であろうと関係なく、私たちは毎日、祖先・コミュニティ・そして歴史を敬い、称えています。
アメリカで暮らす全ての人は、常にどこかの部族の土地にいることを忘れないでほしいです。ネイティブアメリカンに対する悪意のある間違った情報やステレオタイプと戦うために、私達についての正しい歴史を、アメリカに住む全ての人が若い頃から学んでいく必要があると考えています。先住民族の抹消は大きな問題であり、積極的に取り組む必要があります。』
11月には全米各地でネイティブアメリカンによる多くのイベントが行われます。それらのイベントが何を称え、何を伝えようとしているのか、ぜひ調べてみてください。
そしてそこで得た”正しい”情報をもとに、ご家族やご友人と話してみてほしいのです。
ただし、日本ではネイティブアメリカンが身近に感じられない地域も多いく、在米日本人でも、ネイティブアメリカンの存在を身近に感じることはあまりないかもしれません。特にヨーロッパ系白人と国際結婚をしている方にとって、こうした話題が難しいこともあるでしょう。その場合は無理に話す必要はないと考えています。あなたにとって居心地の良い空間作りを優先してくださいね。
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